日中に時間が取れなかった、などさまざまな理由によって夜の引っ越しを望んでいる方もいらっしゃいます。
しかし、あまり身の回りで夜に引っ越した方は多くないのではないでしょうか。「そもそも夜に引っ越しができるのか？」「夜でも対応してくれる業者はあるのか？」など、さまざまな不安が頭をよぎることでしょう。
結論からいうと夜の引っ越しを受け付けてくれる業者は存在します。引っ越し料金が割高になりやすいというデメリットもありますが、まずは引っ越しが不可能でないことに安心してください。その他にもメリット・デメリットがそれぞれいくつか存在しており、事前に把握しておきたいところです。
また、深夜に引っ越しをするとき、電気や鍵が使えなくて困ったり、近所迷惑になってしまったりする恐れもあります。ライフラインや鍵の受け取り、挨拶に関する注意点なども知っておく必要があるでしょう。
今回は、夜に引っ越しするメリット・デメリット、注意点、かかる費用などについて解説していきます。夕積み・宵積みとの違いにも触れているので、夜の引っ越しについて理解が深めていただけたらと思います。
夜に引っ越しすることは可能なの？
まずは引っ越し業者の営業時間や深夜の引っ越しが行える仕組みについて解説していきます。
深夜の引っ越しが可能な仕組み
引っ越し業者のホームページでは「深夜の引っ越しに対応している」と明記されていないことが多いです。それゆえ夜遅くの引っ越しは難しいのではないかと思ってしまうでしょう。
しかし搬出・搬入の作業に対応できるスタッフや、荷物を運搬できるトラックが手配できれば、深夜の引っ越しも物理的には行えます。
実は大手の引っ越し会社にこだわらなければ、夜の引っ越しに対応している業者は珍しくはありません。反対に、夜に引っ越しを行えることを宣伝している業者すら存在しています。
たとえホームページなどに深夜の受付についての記述がなかったとしても、例外的に対応してくれる場合も多いです。どうしても予定が合わずに引っ越しが夜になってしまいそうであれば、見積もりのタイミングでいちど相談してみるとよいでしょう。
夜に引っ越しをするメリットとデメリットは？
昼間ではなく夜に引っ越しをすると、作業がスムーズになる場面がある一方で、作業に気を遣わなければならないこともあります。次は夜に引っ越しするときのメリット・デメリットについて解説していきましょう。
夜に引っ越しをするメリット
まずは夜に引っ越しをするメリットから確認していきます。
道路が空いていて移動がスムーズ
夜は家で過ごす方が多くなる時間帯です。帰宅ラッシュの時間帯を過ぎれば、昼間よりも交通量が減っていくことでしょう。
夜遅くであれば、日中と比べて交通渋滞に巻き込まれるリスクも少なく、移動に長時間を費やさずに済みます。その点、予定通りに引っ越し作業を行いやすいといえるでしょう。
マンションのエレベーターや階段が空いている
夜に空いているのは道路だけではありません。マンションのエレベーターや階段の利用頻度も減っていきます。
マンションで引っ越し作業を行うときは、階段やエレベーターを利用して荷物を搬入します。しかし昼間だと、マンションに住んでいる方が階段やエレベーターを利用するので、思うように搬入しづらいときも少なくありません。
その点、夜であれば会社員や子供などが帰宅し終えるので、階段やエレベーターを利用する住民も少なくなり、荷物をスムーズに搬入しやすくなります。
また、搬入作業のとき住民が階段やエレベーターをスムーズに利用できないと、ストレスを感じる可能性もあり得ます。夜の引っ越しであれば設備の利用頻度が多い時間帯を避けられるので、搬入作業で近隣住民が困る事態も回避しやすいでしょう。
人目を忍んで引っ越しできる
一般的に引っ越しは人に見られても問題ない作業です。しかし特定の理由で、人に気づかれずに引っ越しを行いたい方もいます。
たとえば、ストーカー被害に遭っている方がよい例でしょう。引っ越し先がばれてしまえば、ストーカー行為が継続してしまいます。
また、近所トラブルが原因で引っ越しをしたい方もいるでしょう。その場合、引っ越しの理由を聞かれてしまったときに後ろめたい思いをしてしまいます。
その点、夜の引っ越しでは人目を忍んで引っ越しできます。引っ越しを知られたくない人物を気にしないで済むので、引っ越し作業に集中しやすいです。
夜に引っ越しするデメリット
夜の引っ越しにはメリットだけでなく、見落としてはならないデメリットもあります。次は夜に引っ越しをするデメリットも見ていきます。
引っ越し料金が割高になりやすい
夜の引っ越しに対応できる業者は限られており、夜の引っ越し作業を依頼する場合は、割増料金が発生しやすい傾向です。金額は業者によって異なりますが、およそ1.5～2倍になると考えておきましょう。
コンビニや牛丼チェーン店などのバイトでも、夜の時給が高く設定されることを考えれば、当然だといえます。労働基準法でも深夜の労働に対して、最低でも通常賃金の25%以上の割増料金を支払うことが定められています。
使用者が、午後十時から午前五時まで（厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで）の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用：労働基準法 第三十七条（e-Govポータル）
このように法律の仕組みから深夜は人件費が高くなってしまうので、夜に大人数のスタッフを動員して作業をさせれば、費用が膨れ上がってしまうことがわかります。
コストを少しでも抑えて引っ越しをしたいのであれば、料金が安い引っ越し業者を選択するか、特別な理由がない限り夜の時間帯を指定して引っ越しをしないほうが無難です。
騒音や荷物の破損、ケガが生じやすい
引っ越し業者のスタッフが深夜の作業に慣れていない場合だと、騒音が発生してしまって近所に迷惑をかけてしまうリスクがあります。
たとえば経験が浅くて非常識なスタッフだと、車の開け閉めをするときの音や、荷物を置くときの音などに配慮してくれないこともあり得るでしょう。
近隣住民が目を覚ましたり、眠れずにストレスを感じたりしてしまえば、その後の人間関係に悪影響を与えてしまう可能性がないとは言い切れません。心配であれば、作業員に対して大きな音を出さないように、念押ししておくのが無難だといえます。
また、夜の引っ越しでは足元が暗くてつまずいてしまうリスクも高まります。荷物を運ぶスタッフが転倒してしまえば、大切な家財が破損してしまいかねません。
したがって、可能な限り夜の搬入・搬出作業には慣れている引っ越し業者を選ぶに越したことはありません。
もちろん、自分で荷物を運ぶ場合にも細心の注意が必要です。うっかり転んでケガをしてしまえば、引っ越しどころではなくなってしまいます。足元をしっかりと確認して、障害物の存在を見落とさないように気をつけましょう。
作業が深夜になることも
引っ越し業者の立場からすると、引っ越しではさまざまなトラブルが生じます。申告された量を超える荷物があったり、悪天候で養生や梱包に手間取ったりする場合があるからです。
そのため、夜に引っ越し作業を予約したとき、業者の都合で作業が長引いてしまうと、深夜まで引っ越しが終わらないことも想定できます。次の日の午前中からスケジュールがあれば睡眠時間が少なくなってしまい、体調を崩してしまう方もいるでしょう。
もし寝坊してしまって取引先や知人との約束を守れなければ、その後の信頼関係にまで悪影響を与えてしまいかねません。
特別な理由があって夜の引っ越しをせざるを得ない場合は、次の日に重要な予定をなるべく入れないようにしましょう。
なお、開始時間を決めないフリー便を利用した場合も、引っ越し業者の都合で作業が深夜にずれ込むことがあります。
深夜へのずれ込みを確実に回避したいのであれば、フリー便の活用も避けたほうがよいでしょう。
夜間引っ越しに対応できる引っ越し会社
夜間の引っ越しに対応できる引っ越し業者がなかなか見つからないという方もいるかもしれません。
夜間に対応してもらえる引っ越し業者として挙げられるのがトランスマイルです。
深夜の引っ越しがテレビ番組で特集されたことがあるほか、18時以降の引っ越し料金が半額になるという特徴もあります。夜中の引っ越しでは近所迷惑にならないように配慮してくれる点も安心です。
ただし、三重と愛知だけに対応しているので、全国どこでも利用できるサービスではありません。
首都圏における夜間の引っ越しに対応している業者としては、カルガモ引越センターが挙げられます。通常の引っ越しとは別に18時以降の引っ越しにも対応しています。仕事で帰りが遅くなってしまう方や、閉店後の転居を検討している方におすすめです。
そのほか、夜逃げを専門とする引っ越し業者も存在しています。たとえば、ARISU（アリス）の夜逃げ引っ越しサービスです。
24時間365日営業しており、いつでも夜の引っ越しサービスを提供してもらえます。DVやストーカー、虐待、闇金などのさまざまなトラブルを回避できるよう、安心して暮らせる環境への引っ越しをサポートしてくれます。
夕積み・宵積みという方法もある
夜の引っ越しのように特殊な引っ越しパターンがほかにもあります。ここからは夕積み・宵積みという引っ越し方法について解説していきます。
夜間の引っ越しとの違い
夕積み・宵積みのケースでは前日の夕方以降に車両へ荷物を積み込み、翌朝になってから目的地に向かって運搬を開始します。前日よりもさらに前から荷物を保管しておくこともあり、積み終わったあとはトラックの荷台に鍵をかけてサービス利用者に確認してもらう流れです。
夕方に荷物を積み込んだとしても、その日に引っ越しを開始するのであれば、夕積み・宵積みではありません。つまり、夕積み・宵積みでは夜間に引っ越しをするわけではない点が、夜間の引っ越しとの大きな違いです。
夕積み・宵積みは、引っ越し業者が利用者の要望をもとに引っ越し当日の作業をシミュレーションした結果、1日で作業が終わらない恐れがあると判断したときに提案される傾向があります。
夕積み・宵積みが行われるパターン
たとえば大人数の家族が引っ越しをするとき、作業の時間が長くなってしまいそうであれば、夕積み・宵積みが行われることがあります。
そのほかにもたとえば、新築マンションなどの集合住宅の一斉入居でエレベーターの使用時間が午前中に制限されている場合などにも夕積み・宵積み対応がされることがあります。ちなみに一斉入居とは、新築マンションに入居者が一定期間に引っ越しを進めることです。
一斉入居では多くの引っ越し業者が殺到するため、混乱を避けるためにもエレベーターが使用制限されやすくなっています。
制限時間内に引っ越しが終わらないと、作業が中止になってしまい後日に延長せざるを得なくなる場合もあります。だから午前中に引っ越しをスムーズに行えるように、夕積み・宵積みが行われるというわけです。
そのほか、移動距離が500kmを超える長距離の引っ越しをするときや、賃貸契約が切れる月末の次の日に新居へ引っ越すときなどに、夕積み・宵積みが行われることもあります。
夕積み・宵積みのメリット
夕積み・宵積みでは、引っ越し当日に荷物を詰め込む必要がなくなるので、業者と依頼人の両者が、当日に焦らず余裕を持って作業を進められます。
また、荷物を詰め込む時間を短縮できる分、引っ越し当日の午前中に作業が終わる可能性も高くなります。
夜遅くまで引っ越し作業が終わらない場合だと、荷解き作業が当日に行えずダンボールに囲まれた状態で一夜を明かさなければなりません。
夕積み・宵積みによって午前中に作業が終われば、午後から荷解き作業をゆっくりと進められるので精神的な負担は少なくなるでしょう。
夕積み・宵積みは、引っ越しをなるべく早く終わらせて夜にゆっくり自宅で過ごしたい方や、夜にスケジュールを入れたい方などにメリットのある方法だといえるでしょう。
夕積み・宵積みのデメリット
夕積み・宵積みでは引っ越し前日に荷物を積み込むため、車両の中の荷物を翌朝まで取り出せません。
したがってすべての荷物を積み込んでしまうと、引っ越し前日に不都合が生じてしまうトラブルも起こり得ます。
たとえば、歯ブラシや歯磨き粉を積み込んでしまえば寝る前に歯を磨けず、布団や枕を積み込んでしまうと硬い床の上で寝なければなりません。
したがって、布団やまくらなどの寝具をはじめ最低限生活に必要な日用品は、積み込みをせずに別途確保しておかなければなりません。
また夕積み・宵積みでは、荷物を車両に積んだままの状態で保管しなくてはならないので、保管料が発生してしまってオプション扱いになってしまいます。そのため引っ越し料金が3,000円～4,000円ほど高くなってしまう傾向です。
そのほか引っ越し前日の荷物の積み込みを行うときに、ホコリが舞ってしまって気になる方もいるかもしれません。
ホコリの立たない荷物を優先して積み込んでもらったり、マスクを着用して過ごしたりすることも検討してみてください。
夜間の引っ越しにおける注意点
夜間に引っ越しをするときには、日中の引っ越しとは異なる注意点があります。ここからは夜間の引っ越しに関する注意点について解説していきます。
夜の引っ越しまでに確実に鍵を受け取る
一般的に契約開始日は、家賃発生日と同日であることがほとんど。住んでいないときの家賃を払わないよう、契約開始日に鍵を受け取って引っ越し作業をするのが一般的です。
その点、夜の時間帯は関係者と連絡が取れなくなってしまう可能性が想定できます。したがって、夜の引っ越しに間に合うよう確実に鍵の受け取りを済ませておく必要があります。
もし鍵を受け取り忘れてしまうと、翌朝以降にならないと鍵を手に入れられなくなり、夜の引っ越し作業を行えなくなってしまいます。
鍵の受け渡しは基本的に契約した不動産会社で手渡しされることが多いですが、郵送で受け渡す管理会社も存在している点に注意が必要です。
配達が遅れて予定通りに鍵を受け取れないケースもあり得ます。引っ越し日よりも前に関係者との間で、鍵の受け取りの段取りについて見落としなく確認しておきましょう。
自分の移動手段を用意する
一般的に引っ越し業者が荷物を積み込んだトラックに依頼人は乗れません。
したがって、引っ越しをする人は新居までの移動手段を自分で確保しておく必要があります。基本的にマイカーや電車、バスなどで移動するのが一般的です。
ただし深夜の時間帯だと、電車が終電の時間になってしまうなどして、公共の交通機関が利用できない場合があります。
そのため、夜遅く引っ越しをするのであれば、場合によっては車による移動手段を確保しておく流れになるでしょう。
たとえば、タクシーを用意したりレンタカーを借りたりする方法です。タクシーは移動距離が短ければ移動料金が少なくて済みます。短距離の移動手段としてピッタリです。
電話一本で気軽に手配できる点も便利ですが、輸送専用車両ではないので、引っ越し当日に載せられる荷物には制限があります。
レンタカーは引っ越し日時を自由に設定できるため、引っ越し業者を利用しなくても夜に引っ越しできます。ワンボックスバンや軽トラックなど、荷物や予算に応じて車を選べます。12時間で6,000円～14,000円ほどの料金が相場です。
タクシーとレンタカーのメリットやデメリットも天秤にかけながら、都合のよい移動手段を検討してみてください。
引っ越し中にライフラインが使えるようにする
夜の引っ越しでは、ライフラインが停止するタイミングにも注意しなければなりません。たとえば、夜の引っ越しを行っている最中に電気が利用できなくなってしまえば、暗い中で引っ越し作業を行うことになります。
作業効率が低下するだけでなく、足元に躓いたり家財をぶつけて破損させたりするリスクも高まるでしょう。
ちなみに、東京電力エナジーパートナーTEPCOによると、電気は停止日の当日中まで利用できる一方で、停止日の夜0時には電気が止まってしまうとのことです。
したがって深夜になる前には荷物の搬出準備を完了して、旧居へ出発する必要があるとわかります。
また新居に到着したあとにも電気がつかなければ、搬入作業に支障をきたしてしまいかねません。旧居と同様に滞りなく電気を使えるようにする必要があります。
一般的にブレーカーをあげれば新居で電気を使えることが知られていますが、最近ではスマートメーターの普及にともない、きちんと利用開始手続きを行っていないと、電気が使えなくなってきています。
新居にスマートメーターが導入されている場合、電気の利用開始手続きは特に忘れず行うようにしましょう。
近所への挨拶を引っ越し前日までに行う
夜の引っ越しでは、搬出するときに物音が発生して、旧居の近隣住人に迷惑をかけてしまうリスクが想定されます。
当日の作業を始める前に挨拶するのもよいですが、引っ越し当日はバタバタとしてしまって挨拶をし損ねてしまう可能性もあります。
時間に余裕がないと、今までお世話になった方に感謝の気持ちをきちんと伝えられず、新生活をスタートしてから後悔してしまうこともあり得るでしょう。したがって、引っ越しの前日までに余裕を持って挨拶を済ませておくのが理想的です。
夜遅く搬入するときも、新居の近隣住人に迷惑をかけてしまうリスクも想定できます。挨拶が何もなく夜遅くに物音が聞こえてくれば、非常識な人だと思われてしまいかねません。
したがって、新居の近隣住人に対しても事前に挨拶が必要です。ただ、夜遅い時間帯に挨拶をすると迷惑をかけてしまいます。引っ越し前に挨拶をするのが難しいようであれば、あらかじめ大家さんに周知してもらいましょう。
近隣住人からの理解を得やすくなるよう、あわせて引っ越しが夜になってしまう理由まで伝えてもらうと効果的です。
まとめ
以上、夜の引っ越しが可能な仕組みをはじめ、メリットやデメリット、夕積み・宵積みとの違いなどについて解説しました。
夜の引っ越しは、業者のホームページで触れられていないことがありますが、スタッフやトラックが手配できれば理論上は可能です。
実際に夜の引っ越しに対応している業者はいくつか存在しており、夜に搬出・搬入できることを強みとしている業者も見受けられました。
なお夕積み・宵積みは、引っ越し前日の夕方以降に荷物を車両に積み込み、翌朝に引っ越し作業を進める方法なので、夜の引っ越しとは別の方法です。
夜の引っ越しには、道路が空いていて移動がスムーズになったり、人目を忍んで引っ越しできたりするメリットがありました。
その反面、夜の引っ越しでは人件費が高くなってしまうことから引っ越し料金が割高になってしまったり、騒音や荷物の破損、ケガが発生しやすかったりするデメリットもありました。
メリットとデメリットを天秤にかけて、夜に引っ越しをする妥当性についてよく検討してみましょう。